【インターネット文化】生中継の可能性を追求 伝統文化ともコラボするニコ動
現在世界のインターネット文化の中で、どんなスタイルが最も人気なのかという問いを投げかけたとしたら、すぐさま「コメント付き生中継」という答えが返ってくるだろう。これを発明した日本の動画サイトの「ニコニコ動画」は、2006年に創設してから現在までその人気を保ち続けている。ニコニコ動画は、日本ひいては世界における多くのネット生中継の歴史の「初の試み」を生み出してきた。例えば、バーチャルアイドルの初音ミクのコンサートや2015年9月3日に行われた中国抗日70周年軍事パレードの生中継などだ。全体的に見て、革新的な色彩があまり濃厚とは言えない日本において、ニコニコ動画は十分突出した企業といえるだろう。(文:張妮環球時報掲載。)
ニコ動、画期的なコメント機能と有料会員システム
ニコニコ動画(以下、「ニコ動」と略す)のオフィスは東京銀座の歌舞伎座の近くにある。日本の伝統文化に囲まれる環境下において、同ネット会社は他とは違った特徴を持っている。ホールに入ると、壁に掛けられた多くのアニメキャラクターのポスターが目に飛び込んでくる。同社の親会社であるドワンゴはもともとゲームソフトウェアを作る会社であり、創設者の川上量生氏はアニメ製作経験をもつ経歴の持ち主だ。ニコ動が立ち上げられた当初、Youtubeのような動画アップロードを行うプラットフォーム以外、独自のコメント機能の開発が多くの人に衝撃を与えた。この機能を誰もが知るものとなったきっかけが、2010年11月に民主党の小沢一郎元代表が行った記者会見の生中継だ。小沢元代表は当時、政治献金スキャンダルで騒がれており、ニコ動は小沢氏に生中継プラットフォームを提供した。同記者会見場で一般市民の疑問に答え、生中継画面にはたくさんのコメントであふれ、多くのクリック数を獲得した。2011年に発生した東日本大震災の際には、ニコ動の生中継はさらに人気が高まった。その1年で、同社の経営は黒字へと向かっていった。
ドワンゴ広報部の松本晶子部長は取材に応じ、「広告収入を主な収益としている多くのネットサイトと異なり、ニコ動は全体の77%の収入がユーザーによるもので、11%が広告収入だ。2016年9月までに、当サイトの会員ユーザーは6000万人を超え、そのうち料金を支払っているプレミアム会員は250万人で、毎月の支払い料金は540円となっている。企業家、スター、政界人、歌って踊れるネット有名人などのチャンネルの人気が高い。ランキング1位のチャンネルの年間収益は1億円にまで達している」と語った。
中国の「春晩」を生中継するニコ動のサイト。
「軍事パレードの生中継」で大きな反響
ずば抜けた話題を作る、または他のメディアが採用しないような人物に声を上げさせるプラットフォームを提供する、というのがニコ動コンテンツの目標だ。2012年に、ニコ動は日本の党首討論会のネット生中継を独自に始めた。当時の首相であった野田佳彦氏と自民党党首の安倍晋三氏はニコ動で党首討論を行い、140万人超が視聴し、コメント数は50万にも上った。これは、日本のインターネット発展の歴史の新たな一ページとなった。
ニコ動が中国人にも知られる存在になったのは、日本と中国を驚かせるようなことを行ったからだ。それは、2015年9月3日に行われた中国抗日70周年軍事パレードを生中継し、日本の生中継メディアの先駆者となったことだ。この生中継を行った発端について、松本部長は、「数年前に、ニコ動は中国映画の『南京!南京!』を放送し、大きな反響を呼んだ。このことを受けて、2015年に9月3日中国で行われた軍事パレードの前に、ニコ動は中国中央テレビと提携し、非常に低いコストで独占生中継権を獲得した。中国は大国であるが、日本の隣国として、多くの日本人が本当の中国の姿を見たことがなく、中国に対してあまり理解していない。このような大型プロジェクトを通して中国の現状を知ってもらい、中国政府や中国の国民の考えを理解してもらうためには良い方法となるだろうと考えたからだ」と話した。
また、松本部長は、「軍事パレードの生中継に対して、日本のネットユーザーたちは積極的な反応を見せ、さらに官公庁で働く職員も視聴しており、生中継画面はコメントでほぼ埋め尽くされた。軍事パレードの生中継の大成功の後、ニコ動は2015年の『春晩』(春節<旧正月>を祝う中国の国民的年越し番組)、2016年の全国人民代表大会の開幕式、杭州G20サミットなどの中国のビッグイベントを生中継した。5-10万人のユーザーがこれらの番組を視聴した。この数字は日本における視聴率にしては比較的高い」としている。
さらに、松本部長は、「中国のイベントを生放送することによって、中国に対する偏見をなくし、中日両国の交流促進につながり、さらには日本の視聴者の問題のとらえ方を浮き彫りにすることができる」とした。「中国を生中継する一部の番組の内容は少々過激であり、ニコ動はこれにより日本からの圧力を受けている」と中国メディアに報じられたこともあった。このことに関して、松本部長は、「全く何の干渉も受けていない。それどころか、中国を生中継するのはまだ始まったばかりで、これからは中国側とより広い分野で協力したい」と話した。
バーチャルアイドルの初音ミクと名役者が共演する歌舞伎の舞台。
特殊効果で若い世代が伝統芸能に興味
生中継の中で用いられる新しい技術の応用によって、日本の伝統文化にも救いの手が差し伸べられている。例えば、ニコ動では年に一度行われる相撲の千秋楽を生中継する際には、特殊効果を使って会場の雰囲気を熱く伝えるという試みを行っている。二人の力士がぶつかり合ったときに、生中継の画面には核爆発と同じように、何かが弾けてエネルギーを放出する映像が流れる。日本の伝統芸能である歌舞伎は、今では高齢者が見るものとなっており、若者は全く興味を示していない。ニコ動は歌舞伎の生中継に芸術的な特殊効果を加えるというアイデアを思いついた。例えば、役者が登場したときに、最新のLIVE 3Dの投影技術を使って、後ろのスクリーンにバーチャルアイドルの「初音ミク」を映し出し、バーチャルアイドルと伝統的な歌舞伎の名役者を共演させるというものだ。このスタイルによって、多くの80後(1980年代生まれ)や90後(1990年代生まれ)も視聴するようになった。
最も人気なのはゲーム実況中継だ。ネットサイトのユーザーがプラットフォームで自分が作ったゲームソフトを流し、他のプレーヤーも参加させることができる。この生中継は人気が高いため、数千万円から数億円まで稼ぐゲーム実況中継の配信者もいる。これらの収益は広告企業やニコ動が提供しており、ゲーマーを応援し、ゲームの人気を高めることを目的としている。松本部長は、このことに関して、「現在、多くのゲームメーカーが広告を打ち出す際に、有名人ではなく、これらのネットゲームの配信者に依頼するようになっている」と話した。
日本文化産業の輸出の増加を目指す
ニコ動ではゲームの配信者だけではなく、優れた芸ができるネット有名人も人気となっている。このような人たちに活躍できるプラットフォームを提供するため、ニコ動は毎年さまざまなオフラインイベントを開催している。2015年、ニコ動のオフラインコンサートの一つは2日間で15万人が来場し、790万人がネット上で視聴した。今年ニコ動で人気の高いゲーム「青鬼」は小説や漫画が出版され、いずれは映画化されるという。このように発展を続ける一連の商品を開発している。
ニコ動の将来的な発展に関して、松本部長は、「当社は現在、日本国内では敵なしの状態。我々はいつも他社には真似できないようなことを行なっている」と自信たっぷりに語る。ここ10年で、中国を含めた世界各国でニコ動を真似する人々が多く現れている。『ニコ動伝説』は日本文化産業がこの先向かっていく願いを実現することをかき立てている。統計によると、日本のアニメ、ゲーム、書籍、映画・テレビなどの文化産業の国内市場規模は1200億ドル(1ドルは約114円)に達し、米国についで世界第2位の収益となっている。しかし、文化産業の海外への輸出は全体の5%のみで、米国の3割にも満たない。日本政府はより一層インターネットの文化輸出の影響力を借りて、2020年までに文化産業の輸出額を200−300億ドルにまで引き上げる計画だ。
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